それだけで、強くなれる気がした。できることなら、二度と離したくない。
このまま、帰したく、ない。
シャツがわずかに湿る。名前は、泣いていた。
声を上げないように、それでも、頼りない肩を震わせて。
「・・・ごめん」
首を横に振る、名前に。
それ以上、何が言えるだろう?
泣かないで。思いを込めて、もっと強く抱きしめる。胸に感じる体温に、幸せを自覚する。
涙を収めながら、名前は、俺を見上げて。
会いた、かった・・・です。言うなりまた、涙があふれて。
たまらず口付けようとすると、体が少し、強張るから。
ああ・・・そうだ、ごめん。君はもう。
俺のものじゃ、ないのに。
俺も、会いたかった。もう一度、抱きしめる。
友達でも許される程度の、力の強さで。
その目を見て、しまったら。
ブレーキが効かなくなりそうだ。これ以上、名前を傷つけたくない。
少し、話そうか。平静を装って、体を離す。
・・・はい。落ち着いた、穏やかな甘い、声。
小さなテーブルを挟んで、向かい合わせに座る。
もう、会えないかと思ってた。正直に言うと。
私、も。震える声と、その唇と。
恥ずかしそうに、はにかみながら俺を見る、その瞳。
さっき抱いた体。その、女の曲線を、もう一度感じたくて。
でも、言い出せない。こんなに、そばにいるのに。
近くて、遠い。愛して、いるのに。