言葉に、出してしまったら。
自分の望みを、欲望をはっきりと認識することができた。
俺は、名前を、もう一度取り戻したい。
俺だけのものに、したい。
華奢な体をきつく抱きしめて、舌を絡ませる。
ずっと忘れてた。忘れようと、してた。もう二度と、会えないならと。
会うことがあったとしても、戻れないなら。
いっそ、この記憶さえ、消えてしまえばいいと。・・・でも。
きっと、記憶をなくしても、俺は。
名前、お前に恋をする。
キスの合間の吐息が、艶かしい。柔らかく溶けた体を、抱きしめて。
ベッドに押し倒す。抑えようとしても、抑えられない。
ボタンを外していく、俺の手を、軽く握って。
躊躇の表情を、見せる。
甘く潤んだ瞳は、その躊躇さえ扇情的で。
「・・・いや?」
見つめたまま、問えば。
どっちつかずな唇。
今すぐにでも、俺の体でお前を、その中を感じたいのに。
感じさせたいのに。
・・・無理強いをするつもりも、なくて。
俺の体が、体でそのふくらみを感じるように。
俺が今どうなっているか、わかってるはず。・・・それでも。
「いやなら・・・やめ、る」
嫌われたく、ない。せっかく、会いにきてくれたのに。
一時の感情で、突っ走るような、真似は。
うつろう目は、もう一度俺をとらえて。
俺の手を、その胸のふくらみへと導いていく。
「私、あなたに・・・愛される資格は、ありますか?」
涙がひとすじ、目の際から伝っていく。
「どうしてそんな・・・」
「あなた、以外の・・・人と」
「言わなくていい。・・・言わなくていい、から」
愛してる。体で確かめ合うことを、しなければ。
人はもっと簡単に割り切ることができるのかもしれない。
それでも、愛すればこそ、抱きたいと思う。すべてを、手に入れたいと願う。
慈しむように、互いの肌に口づけを重ねながら。
服を、脱がせあう。
すべてを脱ぎ捨てて、もう一度、深く口付けて。
痛いほど熱い体を、押し留めて。
その体に少しずつ、俺との夜を刻んでく。