ゆっくりと体の上から、下りて、あなたは何も言わずに部屋を出て行く。
快感に慣れた体を、行為の後の倦怠をため息とともに、深く感じながら。
私は、目を閉じる。
最初から分かっていた。あなたが私のそばにずっとついてくれていたことは真実であっても。
恋人と言われたときの、違和感を。
分かっていても拒めなかった。あのときの私に、あなたを拒絶できる理由などなかったのだから。
でも、今なら言える。
シャワーを浴びて戻ってきた、チャンミンさんに。
対峙する。
「話を、聞いてください」
「何の話だ」
髪を拭きながら、私を睨むように見つめる。
「気付いているなら、どうして」
「お前を手放す気はない」
私の腕を取って、ベッドに引き倒す。
「私は・・・もう」
「覚えてるか? 俺の手が綺麗だって撫で回したこと。多分あのときに、お前に惚れたんだ」
おぼろげな、記憶がある。
ユノさんに会いたくてたまらなかったのに、会えなかった。
どうしても私に食べさせたいからと、予約を取り消さずにチャンミンさんを呼んで。
・・・あれが、始まりだった、なんて。
「あの夜、あんなことになるって知ってたら、いっそ抱いちまえばよかった。
あのときにもしそうしていたら。
・・・記憶を失っても、俺のことはきっと、拒絶したはずだから」
「なんて・・・こと」
「胸が潰れるかと思った。お前のことを聞いて。こんなに惚れてるなんて・・・思わなかった」
髪に指を差し入れられる。
「記憶を失う前のお前は、俺より先にユノに会ってた。ユノの恋人だった。
でも、記憶を失ってからのお前は、ユノより先に俺に会ってる」
何を言おうとしているのか、わからなかった。
私のバスローブの胸元をはだけようとする手を、止める。
「ユノはずっと前からこう言ってる。ふたりとも同じ相手を好きになったら、俺に譲ると」
首を横に振る私を、押さえつけて。
「だからもう・・・。
お前は、俺のものだ。誰にも渡さない」
posted by mizuki at 23:07|
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Destiny
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