あの事故さえなければ、あなたが今のような苦しみを受けることはなかった。
もし、思い出しているのなら、ここへ連絡してください。
差出人の名前も、宛名もない、印刷された短い手紙。
電話番号らしきものが、書いてある。
誰からの手紙かも分からないのに、信じて、いいのか。
誰に、繋がるのか。これ以上、傷つきたくは、ない。
・・・それでも、事情を知っているとしか思えない、この手紙の内容を。
信じてみたくて。
おそるおそる、ダイヤルを押す。
繋がるまで、ドキドキしながら、待っていたら。
ヨボセヨ? 意味は、分からなかった、けど。
声はわかった。あの、甘い、声。電話に出るとき、何度か聞いたことがある、気がする。
とっさに、電話を切って。
動悸がする。ただの間違い電話だと、受け流してくれるだろう。
もしくは、ファンのいたずら、だと。
会えない日々、時々眠る前に、電話をかけてくれて。
すぐにでも会いに行きたいと、言ってくれた。
思い出せば、涙しか出ない。
もう、眠ろう。それでも、思いを断ち切れなくて。
携帯を手に、ため息をつく。
せめて、あなたが好きだと、伝えられたら。
どんなに幸せだろう。