毎日、鏡で確認する。愛された痕が、消えて行くのを。
寂しい気持ちと、少しホッとした気持ち、そのどちらも嘘じゃない。
できることならもう一度、何度でもあの時間を、幸せを求めてしまいそうになる。
あの日から毎日、メールがくる。何気ない一言がうれしい。
声が聞きたいと、書かれたときがあった。私も同じ気持ちだった。
だけどきっと、電話のできる状況じゃないんだと思う。
胸元につけられた痕が、もううっすらと黄色くなりかけているのを、見て。
思わず涙が出た。
しばらくそのまま立ち尽くしていた。着信音で我に返る。
誰かも分からないまま電話に出ると。
「・・・名前?」
ユノさんから、だった。
「は、い」
「声が聞きたくて、かけちゃった。今、大丈夫?」
「大丈夫、です」
いざ、声が聞けたら、胸が苦しくて言葉が出てこない。
「泣いてるの?」
「いえ、あの・・・、うれしく、て」
「泣かないで。抱きしめたく、なる」
「ごめん、なさい」
「謝らなくていいよ。・・・ああ、どうしたらいいかな」
困らせてる。わかってた。それでもうれしくて涙が止まらない。
次に会う約束さえ、簡単には決められない。あの頃みたいに、突然私をデートに誘ってくれることも、ない。
周りには誰一人協力者がいない。ただ、あの手紙をくれた人だけが。
私たちのつながりを後押ししてる。その理由も、わからないままだ。
今信じられるのは、ユノさんの言葉だけ。だから、どうしても。
涙があふれる。
あさっての夜なら、会える。約束して、電話を切った後。
ようやく涙を収めて、眠ろうとしたら。
日付も変わろうとする時間、インターホンが鳴る。
とっさにスマホを確認すると、メールが入っていた。
合鍵を、持ってる。・・・居留守も使えない。
「・・・名前?」
少し機嫌の悪そうな、声で。
あの人が私を呼ぶ。