名前の前で、真実を話す必要など、ないのに。
ユノらしい。正しくなければ、名前を愛する資格などないと思っているのだろう。
・・・俺と、違って。
顔面蒼白で凍り付く名前に、ユノは気付かない。
甲斐さんの裏切りを、はっきりとさせることだけに頭がいっている。
ユノの、こういうところが。
俺は許せない。真似できない。・・・悔しい。羨ましい。・・・だからこそ。
名前を渡したくない。
「もうやめろよ」
思わず、声を荒げていた。驚いた名前が顔を上げる。
ようやくユノは、自分の言葉に名前が傷ついていることに気付く。
「・・・ごめん」
ユノの言葉に、名前は首を横に振った。
「私の・・・せいで」
「名前のせいじゃない」
俺が言いたかった言葉を、ユノが言う。傷つけておきながら。
何故そんなことを言えるんだ。
「キムさんが・・・言ったんだ。名前に、謝りたいと。真実を伝えて欲しいと」
名前の目から涙が零れ落ちる。抱きしめたい衝動にかられた。
膝の上で拳を握り必死で耐えている名前を、守りたいと思った。
動こうとした瞬間、ノックが聞こえる。
キムさんが。
ドアを開けるなりまっすぐ名前に近づき、土下座する。